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2019年5月28日

細胞・遺伝子治療における複雑なサプライチェーンを管理

新たに生まれた細胞治療・遺伝子治療業界は、従来のサプライチェーンに混乱をもたらしており、サプライチェーンには今大きな改革が求められています。先進治療の発展すると、それを最適に管理監督するためにロジスティクスソリューションのデザインが必要で、それによって必要不可欠なマイルストーンの達成が可能になります。

自己・同種異系治療向けの生体試料は、厳密な温度管理とタイムリミットのもと、身元と輸送過程の記録管理を確実に行いながら配送される必要があります。マーケンは、複雑なロジスティクスに対応するテクノロジーを開発し、急速に成長する細胞治療・遺伝子治療向けの最適なサプライチェーンソリューションを提供します。

急速に拡大する市場

数百もの製品候補が初期から後期の臨床試験を経て、市販化に向けてスケールアップするなか、細胞治療・遺伝子治療の市場は今後、飛躍的に成長することが見込まれています。現在までに、FDAの承認を受けた細胞治療・遺伝子治療は3種類しかありませんが、元FDA長官のScott Gottlieb氏は、細胞治療・遺伝子治療関連製品が承認される割合は、2025年までに10~20%にまで上昇すると予測しています。1細胞治療・遺伝子治療の世界的な市場価値は、年間平均成長率のおよそ22%で成長し、2017年の60.2億ドルから、2026年までに354億ドルに達すると見込まれています。2

自己・同種異系治療を扱うサプライチェーンの課題

自己細胞療法の生体試料は、アフェレーシスにより患者様から直接採取されます。採取した試料は、製造拠点への移送後に遺伝子組換えが行われ、大量に培養されます。自己細胞は、医療施設に再配送され、患者様に投与されます。採取した細胞と培養した細胞はいずれも、極短時間の間に液体窒素(LN2)または冷凍で配送されます。採取された細胞の配送時間は一般的に、40~50時間以内です。培養された細胞の配送には、厳密な温度管理と身元の記録管理の監視が必要です。

同種異系治療にも、細胞の組換え、培養、最終的な医薬品としての処理という同じ方法が用いられます。試料を製造拠点/医療機関までの試料の配送は、両施設の所在地と利用する輸送手段に左右されます。 

自己細胞治療にも、配送スケジュールに関する課題があります。多くの場合、この製品は、医薬品製造受託機関(CMO)で製造されます。試料の採取、配送、CMOでの受領にかかる時間の調整は、初期の段階では手作業での管理される重要な要素ですが、フェーズ IIIや市販化の段階にスケールアップする際には、ITソリューションにより管理される場合もあります。 

同種異系治療は、健康なドナーから採取した細胞から製造され、液体窒素を使って定温で保管され、医療施設に配送後、適合する患者様に投与されます。この治療の配送には、二次梱包、ラベリング、QPリリース(EU管轄内)を含む、ジャスト・イン・タイムの配送プロセスが必要となります。 

配送過程やサプライチェーンのどの部分にエラーが起こっても、患者様には重大な結果を引き起こしかねず、臨床試験のスポンサーには多額の費用がかかる場合があります。アナリストは、承認済みのCAR-T治療の製造には、一投与につき$200,000~800,000の費用がかかると推定しています。癌や遺伝子疾患にも効果的とされる革新的な治療法は、将来的に有望だと考えられていますが、患者様にお届けできなかったり、患者様が治療を受けられなかった場合、価値のないものになります。

スマートテクノロジーの発展

スマート梱包の開発は、サプライチェーンソリューションにとって非常に重要な要素です。配送ソリューションに監視・追跡システムを組み込むことで、荷物の現在地、温度、衝撃、向きなどの配送データにリアルタイムでアクセスできるようになります。また、事前にアラームを設定しておけば、必要なタイミングで自動メッセージが送信されるため、配送を中断し、必要な措置を講じるなど、荷物を管理することができます。さらに、GPSやデータロケーションを使用して、空港や医療施設といった任意のエリアをジオフェンスする機能もあります。荷物がジオフェンスされたエリアを越えると、自動通知が送信されるため、設定された人は荷物の到着や何らかの逸脱について把握することが可能になります。

そのため、何百万人もの患者様の運命と数十億ドルもの費用は、先進医療の開発を支える複雑なサプライチェーンを管理するバイオ医薬品業界の能力にかかっているといえます。

先進的なITの必要性

細胞治療・遺伝子治療向けサプライチェーンが直面する課題とニーズは、より先進的なITソリューションの需要を生み出しています。これらの治験薬のなかでも、厳密に決められた時間の中で、適合する患者様に適した製剤を届ける必要のある自己細胞治療向けのロジスティクスは、非常に重要な要素です。 

細胞治療・遺伝子治療のサプライチェーンには、患者様の通院のタイミング、アフェレーシス採取にかかる時間、医療施設から資材を回収するタイミング、製造拠点の絵営業時間、製造プロセスにかかる時間、製剤を回収するタイミング、2つの拠点の場所をはじめ、考慮すべき事項が数多くあります。これらの情報は、輸送手段を検討したり、配送経路のマッピング、配送経路の検証に使われます。

自己細胞治療における最大の課題は、各バッチは一人の患者様のために製造されるという事実です。スケールアップとは、量的により多く製造するということではなく、バッチの数を増やすという意味になります。スケジュール設定も、初期段階から後期、市販化までの移行において著しく異なります。初期の開発段階では、スケジュール設定は主に手作業で行われます。プランナーは、医療施設からのリクエストを受け、対応可能な製造拠点と調整を行い、サプライチェーンのさまざまな要素を結びつけるロジスティクスインターフェースを管理します。スケールアップの際には、複雑性が増すために、リソースを増やすことにあまりメリットはなく、効果的なITシステムを使用することが不可欠です。ITシステムがロジスティクスシステムに適切に連携すれば、利用可能なデータを活用してリクエストを自動化し、将来的なリクエストも予測できるようになります。

より分散型のアプローチを想定

輸送経路のマッピングを行うと、資材や製剤を時間通りに確実に配送できる経路がどこにもないという結論に至ることがあります。あるケースでは、患者様の検体を早期に回収したり、既存の航空輸送オプションに間に合うよう、CMOに対し、資材の受領/発送により柔軟に対応するよう要求したりすることで、こうした問題に対処しています。

より多くの細胞治療・遺伝子治療が市場で利用可能になるにつれ、患者様が製造拠点により近く移動することが求められたり、分散型のサプライチェーンによるアプローチの導入が必要になったりする可能性もあります。製造技術が進化し続け、モジュール型施設の管理・導入が容易になれば、後者のオプションの方がより現実的なものとなるでしょう。

細胞治療・遺伝子治療分野が拡大し、加齢やその他の一般的な症状に対処できるようになれば、これらの治療法をより幅広い集団に提供するための分散型アプローチの需要がさらに高まることが見込まれます。

先進的な治療法を扱うには、その将来性と課題において、複雑なロジスティクスがともなう臨床試験の管理に実績を持つサプライチェーンプロバイダーを選ぶことが必要となります。

次世代の治療のために市販化を促進

何百万人もの患者様の運命と数十億ドルもの費用は、先進医療の開発を支える複雑なサプライチェーンを管理するバイオ医薬品業界の手腕にかかっています。先進的な治療法を扱うには、その将来性と課題において、複雑なロジスティクスがともなう臨床試験の管理に実績を持つサプライチェーンプロバイダーを選ぶことが必要となります。

マーケンの中核となるサービスの一つに、生体試料の採取と配送があります。弊社は、培った経験と高度な技術を活用し、アフェレーシスによる検体の採取と細胞治療・遺伝子治療による製品の配送を行っています。医療施設は、データ入力と配送の要請にAllegroポータルを使うことができるようになりました。マーケンの 新しいスマートボックスは、カスタムデザインされた保冷保温機能を備えており、治験薬や治験薬の原薬、細胞治療・遺伝子治療関連の貴重な配送物に対して最大限の保護を提供するよう設計されたものです。さらに、3種類のGPS追跡装置のいずれかを使用して24時間365日追跡し、可視性を提供します。マーケンのスマートボックスは、1時間に1回の頻度で位置、温度、移動、衝撃情報を提供するマーケン独自のSENTRYデバイスを含め、現在入手可能なあらゆるGPS追跡デバイスを利用できる、初めての真に構成可能なコンテナです。また、この容器には、温度監視や識別のためにBluetoothテクノロジーを搭載することも可能です。

最近では、マーケンは閉ループ梱包ソリューションも紹介しています。このソリューションを利用すると、統合・自動化された梱包の返送プロセスにより、資材を必要な温度に維持しながら、あらゆる目的地に配送することを可能にします。この新サービスは、重要な製剤を再利用可能で有用性の高い梱包材で発送元に返送し、梱包材を再調整・再配置することを可能にするため、優れた効率性が実現します。

UPSの臨床サプライチェーン子会社として、マーケンはUPSの広範な航空貨物ネットワークを活用できるため、適切な配送経路を確保する機能が強化されました。マーケンが集荷した荷物はUPSの航空貨物便で輸送された後、マーケンにより最終目的地まで配送されます。ヨーロッパとアメリカ大陸をカバーするハイブリッドソリューションにより、マーケンはエンドツーエンドで配送を監視でき、より優れた柔軟性とリソースを得ることができます。 ブラジルでは、最終集荷時間が最大で5時間延長されたため、ゆとりを持って検体の準備・梱包を行うことができるようになりました。

マーケンでは、細胞治療・遺伝子治療サプライチェーン内でスケジュール管理を円滑に進める先進的なソリューションの開発に積極的に取り組んでいます。自己・同種異系治療向けの細胞治療サプライチェーンを効果的かつ容易に調整する統合ソフトウェア技術を開発した大手サプライチェーンソフトウェア企業と共同開発を進めています。オペレーティング・システム間のインターフェースを使うことにより、ユーザーは生産力や各医療従事者の治療スケジュールに合わせて、資材収集を自動的にスケジュールまたは修正することができます。さらに臨床医は、サプライチェーンの各段階における治療の進捗を、単一の一体化されたシステムで確認することができます。 

マーケンは、過去のデータを活用して配送時期や必要量を予測し、需要計画やスケジュール調整プロセスを最適化します。

マーケンでは、スマートテクノロジーを導入し、広範なネットワークを構築することにより、細胞治療・遺伝子治療のサプライチェーンに関する問題を事前に解決することができるようになりました。そして、こうした命を救う先進的な治療薬を輸送するためのサプライチェーンロジスティクスを提供するだけでなく、包括的なソリューションを提供することに重点的に取り組んでいます。マーケンは、このような複雑で変化し続ける業界の治療法の進化に対応するため、継続的に成長・拡大し続けています。当社は、患者様を中心とした治療法や病気の治療法の開発で最先端を行く組織のために、献身的でグローバルなサプライチェーンパートナーとして、尽力しています。 

参照

  1. Director of the Center for Biologics Evaluation and Research on new policies to advance development of safe and effective cell and gene therapiesーアメリカ食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)ー2019年1月15日、ウェブサイト。
  2. Cell and Gene Therapy Market Future Developments, Business Insights, End Users, Application And Forecast To 2026ーCoherent Market Insightsー2019年3月4日、ウェブサイト。
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